就業規則の変更により労働条件を変更する場合には、就業規則を周知させ、かつ、不利益の
程度、変更の必要性などが変更に係る事情に照らして合理的なものである事が必要です。

【就業規則の変更が認められなかった判例】

�@みちのく銀行事件（平成１２年　最高裁第一小法廷判決）
　就業規則の変更により、５５歳以上の行員の賃金削減を行ったことについて、多数労働組合の
　同意を得ていた。経営上の必要性はあるが、高年層の行員に対しては、専ら大きな不利益の
　みを与えるものであり、救済ないし緩和措置の効果が不十分であったため、合理性が認めら
　れなかった。

�Aアーク証券事件（平成１２年　東京地裁判決）
　就業規則の変更により、従来の職能資格制度・職能給制度に代えて変動賃金制（能力評価制）
　を導入したことにつき、一般的な制度として見る限り、不合理な制度であるとはいえないが、代償
　措置等が採られておらず、変動賃金制（能力評価制）を導入しなければ企業存亡の危機にある
　等の高度の必要性がなかったので、合理性が否定された。

【周知していなかった事により変更が認められなかった判例】

�@日本コンベンションサービス事件（平成１０年　大阪高裁判決）
　就業規則における懲戒解雇された者には退職金を支給しないとする定めの新設について、適法
　な意見聴取が行われた上で届けられたものともいえず、一般的に従業員に周知した事実が認め
　られないことから、その効力が生ずるものではないとした。

�Aフジ興産事件（平成１５年　最高裁第二小法廷判決）
　就業規則に基づき労働者を懲戒解雇したが、その行為があった時点では就業規則は周知され
　ていなかった。就業規則が拘束力を生ずるためには、その内容の適用を受ける事業場の労働者
　に周知されていることが必要だとして、懲戒解雇を有効とした原審を破棄し、差し戻した。